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地元の人

あざみともじ
浅見知司

箸職人
ものづくり・職人
浅見箸製作所
  • 1943年生まれ
  • 埼玉県秩父市出身

浅見箸製作所 浅見知司さん

生まれ育った秩父市中村町で、納豆屋から箸屋へ、先代の家業を引き継ぐ二代目。『手しごと、ものづくり』を後世に伝えようと、熱い思いを胸に秘めた箸職人の浅見さんにインタビューしました。

浅見箸製作所の歴史

浅見箸製作所の歴史

現在の仕事は、昭和36年3月に私が秩父農工(現:秩父農工科学高等学校)を卒業すると同時に始まりました。それまで実家は納豆屋だったんだけど、親父から「箸を作るぞ!」と言われて始まりました。なぜ納豆屋から箸屋になったのかと言うと、当時の世の情勢は仕事を切り替える時期だったんじゃないかなと思います。当初は親父が職人を連れて来て箸屋が始まり、わりかしスムーズに仕事が進んでいました。親父はほとんど営業専門で、私は工場の中で職人から仕事を教わって、段々一人でも箸を作れるようになりました。職人はかなり長い期間働いており、昭和46年の頃も10人ぐらいいて、その頃はかなり忙しかったです。それからは1人減り2人減り…段々いなくなっていって、今では箸は自分一人で作っています。人に頼るよりも自分で何でもしたい性格で、現在に至っています(笑)
 職人がたくさんいた時に作っていた箸は、漆塗りの「木地(きじ)」として販売していました。漆を塗る前の箸の原型ですね。それを専門に作って北海道以外の全国に販売していました。これが各地の箸として完成し販売された訳です。一番わかりやすいのだと青森の『津軽塗』で、一番多い時はここの木地が津軽塗の8割を占めてたんじゃないかな。

こだわりの箸作り

こだわりの箸作り

元々は木地を作っていたんですが、バブルが弾ける頃は機械化が進み木地が段々売れなくなってきました。そこで色々考え、自分だけの箸を作ろうと思いました。塗りの仕事は全くできないので、じゃあどうしようかと思った時に、まず「使いやすさ」と「手持ち感の良さ」を考えました。例えば最近多い箸先に滑り止めを付けるのは、口当たりがよくなく歯触りが嫌な感じがする。私はそういう箸は作りたくないので、私の作る箸は見た目ではわからないけれど、自分なりの使いやすい箸先を考えて作っています。
 見た目では分かりづらいと思うんだけど、木に柄のあるものは「檪(くぬぎ)」を使っていて、柄の無いものは「斧折樺(おのおれかんば)」という素材を使っています。箸の先端はとても大事で、細く丸くせず、真っすぐぷつっと切った状態にする。この状態を保つことで箸の使いやすさが出ていると私は思っています。この切った角があるから、きっちり食べ物を挟めます。丸くすると滑りやすくなるし、あまり細いと使いにくいので適度な太さも必要になってきます。

素材から見る地域の特性

素材から見る地域の特性

 素材の「斧折樺(おのおれかんば)」の"樺"は白樺の仲間です。白樺も正式には「しらかんば」と言います。白樺はとても柔らかい木で、観賞するにはすごく綺麗な木ですけど、何を作るにも不向きな木です。斧折樺は全く反対の木で、国産では一番硬くて重いと言われています。水に浮かせると8割程の斧折樺は水に沈みます。
 この「硬くて重い」素材は箸作りに適しています。例えば温かい地方の人は軽い箸を好み、寒い地方の人は重い箸を好むそうです。理由は後々分かってきたのですが、寒い地方は手がかじかむから、かじかんだ時でも重量感のあるものはしっかり手に持って使える。だから日常使う箸も、ある程度重量がある方が使いやすいのです。私が「雲水箸(うんすいばし)」と名付けたとても太い箸があるんですが、これは雲水(修行僧)が真冬の修行で手がかじかんでも使いやすいようにと太く作りました。

箸の文化や箸作りを次世代につなぐ

箸の文化や箸作りを次世代につなぐ

 最近では箸作りの教室を地域の公民館や学校でも実施しています。
活動を始めた理由は、以前デパートに箸を売りに行っている時、ある女性が2、3日通ってきてくれました。
その方は学校の先生で、色々話をしている中で「学校で箸の話をしていただけませんか?」と言ったんです。初めはそんなことはできないなぁと思ったのですが、何度も頼まれたので引き受けました。その時は杉並区の東田小学校の5年生に箸作りの話をしました。そしたら想像よりも生徒さん達は本気で聞いてくれるんだいなぁ。その姿を見たら、「いい加減な話をしたらダメだな」「自分の考えていることをきちんと話さなければな」と思
いました。最後に生徒さんから「箸ってたかが二本の棒だと思っていましたが、すごく想いが詰まってるものな
んですね。」と言われた時はとても嬉しかったいなぁ。
その後、他の学校からは「箸作りを生徒に教えて欲しい」と話が来たこともありました。箸作りは簡単だと思って教えたんですが、全然できないんですね。自分には簡単だと思っていた箸作りはとても技術が必要なのだとその時気づきました(笑) 秩父でも、最近だと西小学校、第一小学校、皆野の国神小学校でも同じような活動をしています。今後も必要とされれば、どこでも飛んでいくつもりです。

秩父手しごと衆YOSAGE(よさげ)について

秩父手しごと衆YOSAGE(よさげ)について

8年くらい前、私がデパートの職人展で箸の販売をしていた時、秩父の矢尾百貨店さんから、「うちのイベント会場で一週間何かできないか?」と相談されたのがきっかけで始まった活動です。その時、秩父にも職人はいっぱいいるんじゃないかなと思って探してみたところ、専門の職人は限られるけど、副業できそうな職人はたくさんいるなと思いました。そうした人達を集めて、イベント的に物販をしたのが始まりです。第一回目は13人集まりました。今では年2回程、矢尾百貨店さんでイベントを実施しています。
 確たる組織ではないので、ちゃんとしたメンバーがいるというよりは、私が代表となって声をかけた、ふわっとした寄せ集めグループです。当初、手しごと衆の「衆」を「集」にしようかという考えもあったんだけど、集めるんじゃなくて烏合の衆の「衆」の意味がいいなとなり、この字に決めました。ちなみに『YOSAGE(よさげ)』は、秩父弁で何か物を見て「よさそうだな」という意味になります。団体名が長いので、私は「よさげ」と呼んでいます。今は矢尾百貨店さん以外にも、天気が良ければ秩父神社前の妙見の森公園でイベントをしたり、各自がギャラリーなどで活動しています。また秩父夜祭の『絹市』とか秩父地域のお祭りに参加する活動をしています。
 今後は、今やっている人たちがもっとレベルアップして、独自の商品を作り出せたらいいなと思います。秩父で物作りしたいという人たちは、よそから来てる人達も多いです。秩父地域は秩父市・横瀬町・皆野町・長瀞町・小鹿野町・東秩父村で秩父と言っているんだけど、そんな秩父に物づくりで来てみたいという人たちを応援したい。そしてそういう人達がもっともっと増えて、物づくりで生活できるようになればいいなと思ってます。

昔の秩父について教えてください

昔の秩父について教えてください

 そう言われると色々な思いがあるんだいなぁ。
自分が今住んでいる中村町の消防団に入った時だけど、昔は「生え抜き」という言葉があって、この言葉は代々
そこに住んでいる人という意味なんだけど、私は生まれたのが秩父神社近くの上野町で、5歳の時にここに移ってきたので生え抜きじゃなかった。当時は生え抜きと言われた人が大手を振っていた時代で、今じゃよそから来た人が多いのでそんな言い方はなくなったけど、一時はそういうときもあった。当時はよそ者だったから、先輩はすごい怖かったし和やかな雰囲気じゃなかったかな(笑)
今は遠くから移ってきた人たちに住んでもらって、そういう人たちがどんどん社会活動に参加してもらう、一番は学校がらみの青少年育成にかかわってくれてる人たちかな。そういう人たちが積極的に活動してくれることはとてもいい方向だなと思っています。

”秩父人”として大切にしていきたいもの

”秩父人”として大切にしていきたいもの

 昔から秩父の人間は、人との交わりが下手だと言われています。でも秩父銘仙があれだけ発展し商売として
成功したのだから、そんなことは無いと思っています。段々衰退してきた時代の流れを見ると、難しいことなん
だけど、私としては長く愛され使い続けられるものを大事に守っていきたいなと思っています。私は商売は下手
だけど、丈夫な物を作りたい。丈夫だとリピーターとしてお客さんの購入は減ってしまうかもしれないけれど、
物作りの人達にはそういう気持ちでいて欲しいし、その想いは大事にして欲しいと思っています。
 古い物を大切にという点ではこの家もそうの一つです。親父が若かりし頃、色街の建物を移築したんですね。
新しい家を見るといいなとは思うけど、やっぱり自分でいじれる家がいいなと思います。古いは古いなりに、こ
の家を直しながら住んできました。

将来どんな秩父になって欲しいか

将来どんな秩父になって欲しいか

誰もが仕事を続けられる世の中が一番いいと思う。今の社会はそれが叶わない、商売もネットに翻弄されている。やっぱり秩父に来てもらって、実際に物をみて買ってもらう。それで個人が生活できていければいいなぁと思う。また大きな店がどんとできるのは仕方ないのかもしれないけれど、地域に住む人達みんなが利益を上げられ、生活できる秩父であって欲しいと思います。


浅見箸製作所
http://hashiya.ocnk.net/

Copyright© City of CHICHIBU All Rights Reserved. 掲載記事、写真の無断転載を禁止します。
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